「会いたい」は愛だ

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先日、友人が「ロンドンに仕事で行くから会えない?」と連絡をくれた。


仕事の中日は一日しかない。

それなのに、その貴重な時間を、私に会う時間に充てようとしてくれるなんて。

これはもう、愛だ。

「あなたのことを忘れていませんよ」
「あなたと話したい、共有したいことがあります」

そんな風に伝えてくれる、承認だ。

ひとりで思う存分、ナショナルギャラリーやら大英博物館やらビクトリアアルバート博物館やら、気兼ねなく回ることだってできる。
テムズ川をクルーズして、気が向いたらカフェで休んで、ハイドパークでぼんやりすることだって。

せっかくロンドンに来たのだから。

しかも仕事でしょっちゅう来ているのかと思いきや、なんとイギリスに来るのは5年ぶりで、しかもロンドンに寄るのは10年以上ぶりだという。

そんなとっておきの24時間のお休みを使って、「会いたい」と言ってくれる。

しかもせっかく日本から行くからと、ロンドンでは手に入りにくい物をあれこれと買い出しまでしてきてくれると。
私もごうつくだから、まんまと甘えて100均でスポンジやらふきんやら、味噌汁の具やらとたくさん頼んでしまった。

それなのに私の70%くらいしかないであろう細い体で、スーツケースにぱんぱんに詰めて持ってきてくれた。

ううう、どうやってお返ししていいやらわからない。

なんと感動と感謝を表現していいものか、言葉にならない(ライターのくせに)。

とにかく半泣きでホテルまでお迎えにあがって、街中まで電車で移動して、それから私たちはせっせと歩いた。

彼女が好きだというフィッシュアンドチップスで腹ごしらえをしたら、パディントン駅からハイドパークを抜けて、バッキンガム宮殿で写真を撮り、ホースガーズの交代にちょうど出くわして、
そこからさらにビックベンとウェストミンスター寺院を眺めつつ、トラファルガー広場まで。

途中、いくつかのスーパーに寄ってご家族へのお土産(チョコレートやら、ピクルスやら)もたくさん買って。

これでだいたい、2万歩くらい。
右手に彼女が買ってきてくれたお土産を抱えたまま、ひたすら歩いた。

そして背中のリュックにも重いものを詰め込んだのに、そのずっしりとした重量を忘れるくらい(なにせ20個入りのバブ2箱とお味噌、牡蠣醤油700MLだから物理的にはまあまあな重さ)、私たちはよくしゃべった。

仕事のこと、家族のこと、仕事のこと。
日本の将来のこと、イギリスと違うところ、これからやりたいこと。

彼女と会ったら話したいなと思っていたことが、一緒にいた7時間でべらべらしゃべってもなお、6割くらいしか話せなかった。ありすぎる。


彼女とは、どちらかの仕事の都合で近くに来た時に会う。
だから年に1度くらいしか会えていない。
次に会う時までにずっと貯めている。共有したい話を。

これって、愛だ(2回目)。

人は、「誰かとの間」に自分の存在を感じられて初めて、自分になれる。
「誰かとの間」にじゃないと、自分を感じることは難しい。

相手によって、出現する自分は少しずつ違う。

母親としての自分、ライターの自分、コーチの自分、妻の自分、まったく知らないどこかのおばさん。

彼女と会って話している間は、ずっと「彼女と私の間に発生する私」だった。

その時の自分がわりと好きだと思える相手は、とても得難い存在だ。

どんな自分が出没して、その自分を自分がどう思うかは、相対してみないとわからないし、タイミングによっても変わるもの。


例えば昔はうざいだけだった親に対して、今は客観的に見られるようになったから優しくできる、とか。

彼女との間に発生する私は、頑張りたい私だった。
何かをあきらめたり、ふてくされたりしているだけじゃ嫌だな、
なんだかんだ調整して、頑張っていたい。そう思わせてくれた。

どうか彼女がご家族にとたくさん買って帰ったミルクチョコレートが、世界一美味しい味がしますように。
あれを買うためにまた行こうと思うくらいに。


ABOUT ME
中原絵里子
中原絵里子
編集・ライター・キャリアコーチ
大手教育出版社に20年勤務後、独立。上阪徹ブックライティング塾9期生、トラストコーチングスクール認定コーチ。
東京在住、3児の母。 コーチングでは、主に働く女性のこれからの働き方を決めるサポートや、ライティングのサポート、挑戦したいことに向けた伴走を行っています。
ライティングでは、教育、勉強法、進路、働き方、コミュニケーションなどをテーマにインタビューや記事作成、ブックライティングを行っています。
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