「私なんか」を超えた先に

ericoach1

先日、新卒で入社した会社の同期と再会しました。
SNSでつながったばかりでコメントのやり取りをするうちに、一人が京都から仕事で東京に来る機会があるとのことなので、じゃあごはんでも食べようよと。

その同期の一人とは、15年くらい前に仕事で少しだけからんだ以来。
懐かしいねと昔話を咲かせているうちに、その同期が何気なく、

「君は入社直後から、いや内定者時代から目立ってたよ」

と言ったんです。
ん?目立ってた?なんで??

同期は全部で160人いて、めちゃくちゃ優秀な人から、モデルみたいに美人な人から、
ネットの世界で固定ファンがたくさんいる人から、本当に多種多様。個性派採用と言われた世代。

そんな中で春採用で落とされてもあきらめきれず、秋採用で潜り込んだ、目立つ実績も学歴もない私が目立つはずはないのに?

そう思って彼がそう言った背景を探ろうと、当時のことを思い出してみた。
心当たりがあるとしたら、「内定者メーリングリスト」でよく発言していたこと。

160人登録しているのに、発言するのはごく一握り。
しかもその投稿がセンスの塊で、ほぼエッセイと言えるくらいめちゃくちゃ面白いものばかり。

その中でレスを書いたり、発言したりしたかもしれない、そういえば。

どこのコミュニティでも、同じようなことが起きていたりしませんか?
登録者数はたくさんいるけれど、発言するのは限られた数人がほとんど。
だからよく投稿する人は、コミュニティの集まりなどで「発信見てますよ」と声をかけられる。

発信してみたいんだけど、気後れしちゃって。
自分の意見なんて平凡だし、文章力があるわけでもない。
目立つのはコワイ。万が一炎上しちゃったらと思うとすくむ。
この場の読むべき空気がつかめない。

発信できない理由として、こんな風に思っているのかもしれません。

私だって、自分の物を見る目がどれだけ平凡かも、
それを表現する言語化スキルがあるわけじゃないこともわかってる。
目立たない方が無難だし、強めの反論に傷つくこともない。


ただ、もしその「私なんかが発信しなくても」を乗り越えられたら、
その先に何があるのだろう。

なぜ、その不安を超えてまで発信するんだろう。

改めて考えてみると、答えは単純で、「それでも表明したいから」なんですよね。

なつかしい友人に会えた。そこでこんな気づきを得られた。
自分の感情がこう揺れた。
こんなことをしてみたら、こんな結果になって大変だった、感動した。

そういった、ほっておくと流れていってしまう感情や気づきや引っかかり、
ちょっとした学びや世界の美しさを、残しておきたい。だれかと共有したい。

ライターの仕事なんて、まさにこの「聞いて聞いて!」で成り立ってる。

今大河ドラマで注目されている「枕草子」だって、急激に没落していく主人である定子が生きる気力を失っていくのを見かねて、
清少納言が「ほら、世界はこんなにも美しいですよ」と、定子に語りかけるためだけに書かれたもの。

冬の日の早朝がどれだけ美しいか。見るべきものがどれだけあるか。だから生きましょうよ、と懸命に励ましている。

それが伝わってくるから、千年たっても色褪せることなく、私たちの心を揺さぶり、改めて世界を見つめ直す機会を与えてくれているんだと思う。


私はもちろん、清少納言のような鋭い感受性や表現力はないけれど、
それでも、これが美味しかったの、この絵に感動したの、やっぱりこれが好きだなと思ったの。
こうした感情を興奮しながら語りかけたい。いや、語りかけずにいられない。言葉にして残しておきたい。

それが、もしかしたら思いもかけないところで、だれかの感情を動かすきっかけになるかもしれないし、行動を促すかもしれない。

私が今せっせと「心配性ライターの細かすぎる海外赴任準備」というnoteを書いているのも、
「こんなところに盲点が!」「細かいところがわからなくて不安だった」みたいなリアルタイムでの気づきをとりあえず残しておけば、これから海外に引っ越ししようとする人の参考になることもあるかもしれないし、
パニックになってるのは自分だけじゃないと安心できるかもしれないと思っているから。

これが自己満足だとしても、確かに自分を満たすことはできる。
時間が経てば、どれだけ忘れたくなくても、忘れてしまうのだから。


発信やコメントは、今この瞬間の自分がキャッチした信号であり、言葉。
時間が経って、何かの拍子にあとから読み返した時に、何かを思い出させてくれたり、励ましになったり、反面教師になることは確かにある。

だからもしも自分の意見表明が、誰にも読まれず誰に影響を与えないとしても、
未来の自分のために書く、ぐらいでもいいんじゃないかな。

「私なんか」を乗り越えた先に何があるのか、私もよくわからない。

でも、わからない方が面白い。
全然思いがけないところにいつの間にかたどり着いてるかもしれませんよね。



ABOUT ME
中原絵里子
中原絵里子
編集・ライター・キャリアコーチ
大手教育出版社に20年勤務後、独立。上阪徹ブックライティング塾9期生、トラストコーチングスクール認定コーチ。
東京在住、3児の母。 コーチングでは、主に働く女性のこれからの働き方を決めるサポートや、ライティングのサポート、挑戦したいことに向けた伴走を行っています。
ライティングでは、教育、勉強法、進路、働き方、コミュニケーションなどをテーマにインタビューや記事作成、ブックライティングを行っています。
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